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ステップ3:体外受精

体外受精は、女性の卵巣の中からとりだした卵子と男性から採取した精子を混ぜ合わせ、受精させ、受精卵を子宮に移植する方法です。人工授精で妊娠に至らなかった場合など難治性の不妊に対し有効な治療法になりますが、身体的にも経済的にも人工授精より負担が大きくなります。
卵管が詰まっていて卵子が精子と出会えない女性、運動する精子の数が少ない男性、精子の動きが悪い男性などに向いています。

人工授精と体外受精の特徴

人工授精 体外受精
対象者 軽症〜中等症の不妊 重症の不妊
受精の場所 体内(自然妊娠と同じ) 体外(シャーレ内)
治療日数 1日 約1ヵ月
1回の費用 数万円 数十万円
1回の妊娠率 数% 数十%

苛原稔:インフォームドコンセントのための図説シリーズ 不妊症・不育症
医薬ジャーナル社 2016 pp.76 改変

体外受精の流れ

体外受精の流れ 採卵

※個々の状況によりかわります。

採卵、採精

成熟した卵子を卵巣から取り出すことを「採卵」といいます。採卵針を腟から挿入し卵巣に刺し、卵巣の中のひとつひとつの卵胞に対し卵胞液ごと吸引していくことで、卵胞の中の卵子を取り出します。
採卵の前にくすりを投与し卵巣中の卵胞の発育を強く刺激(卵巣刺激といいます)することで卵胞を発育させやすくし、複数個の卵子を取れるようにしたり、今まで取れなかった卵子を取れるようにしたりすることがあります。卵巣刺激をした場合、平均採卵数は6-10個程度ですが、まったくとれない場合もあります。採卵数は6個以上とれると妊娠に至る確率が高くなります。なお多く取れすぎるような状況はOHSS(卵巣過剰刺激症候群)の副作用が生じるリスクが高くなります。
合わせて、精子を専用容器に採取します。これを「採精」といいます。

採卵

くすり(卵胞発育を刺激)を投与した場合の採卵数

くすり(卵胞発育を刺激)を投与した場合の採卵数

Steward RG : Fertil Steril 2014:101(4), 967-973

受精

卵子を入れた培養液(シャーレ)中に精子を加えて(媒精)、受精させます。これを体外受精(IVF;in vitro fertilization)といいます。

受精

培養

培養液に満たされたシャーレの中で3〜5日程度、受精卵を培養します。できるだけ女性の体の中と同じような環境下になるよう培養器(インキュベーター)で、受精卵が順調に育つよう培養士さんが管理します。
培養液の中で受精卵は分割(細胞分裂、卵割)することで発育します。受精卵は、媒精の翌日(1日目)には2つの前核に、2日目には4細胞に、3日目には約8細胞に分割していき、5〜6日目にはたくさん分割した胚盤胞(はいばんほう)に発育します。なお、発育を始めた受精卵を「胚」といいます。

培養

辰巳賢一:不妊治療がよくわかる本2011 日本文芸社より改変

移植

培養した胚(受精卵が発育したもの)を子宮腔内へ移植します。主に、3日目に8細胞期の胚を移植する「初期胚移植」と、5〜6日目の胚盤胞期の胚を移植する「胚盤胞移植」があります。移植用の柔らかいチューブに胚を入れ、超音波で観察しながら、チューブを子宮腔内に挿入し注入します。なお、通常1回に移植する胚は原則1個、条件により2個までとされています。このように数を制限するのは、多胎(たたい)妊娠のリスクを避けるためです。
体外受精から胚を子宮腔内まで移植するまでの過程を体外受精-胚移植(IVF-ET)といいます。

胚の凍結

採卵の前にくすりを投与し卵巣中の卵胞発育を強く刺激(卵巣刺激といいます)することで、卵胞を発育させやすくし複数個の卵子の採卵が可能となります。しかし、1回に移植する胚(受精卵が発育したもの)は1〜2個とされているため、移植されず余った胚は液体窒素の中で凍らせて保存し、後日改めて解凍して(融解して)移植します。これを、「凍結(融解)胚移植」(FET)といいます。凍結技術が進歩し胚を安全に凍結保存できるようになり、2015年にARTで生まれた児は約5万人強ですが、約4万人が凍結胚移植にて生まれています(JSOGデータより)。
一方、胚を凍らせずにそのまますぐに移植する方法を「新鮮胚移植」といいます。最初に新鮮胚移植を行い着床・妊娠が得られなかった場合、凍結保存しておいた胚を移植できるようになり、採卵1回あたりの治療成功率(妊娠率)が向上しました。なお、新鮮胚移植を行わず、全ての胚を凍結し日を改めて移植する場合もあります。

黄体期の管理

自然の妊娠経過においては、卵巣で排卵が起きると、卵巣内に残った卵胞が黄体となり、黄体から黄体ホルモン(プロゲステロン)と卵胞ホルモン(エストロゲン)が分泌されます。これらのホルモンが胚の着床と妊娠維持に重要です。そのため、ARTではこれらホルモンの分泌量が少ない場合にはくすりとしてプロゲステロンを補充します。
新鮮胚移植においては、黄体は存在するものの卵巣刺激や採卵によって機能低下が生じているため、プロゲステロンの投与が必要となります。凍結胚移植のうちホルモン製剤を事前に投与し子宮内膜の環境を整える方法(ホルモン補充周期といいます)においては、黄体が作られないためホルモンが分泌されず、プロゲステロンの投与はより重要です。一方、凍結胚移植のうち排卵をおこさせる方法(自然周期といいます)においては、黄体が作られるためホルモンが分泌されます。そのため、ホルモンが分泌されにくいと判断された場合にはプロゲステロンの補充を行ないます。

妊娠の判定

胚移植後、胚は子宮の内膜に着床し、子宮内膜の血液から酸素や栄養を吸収し、発育していきます。胚移植から約1週間後(妊娠3週以降)には絨毛が形成されhCG(絨毛性性腺刺激ホルモン)が分泌されるため、尿や血液検査でhCG値を測定し妊娠判定を行います。この時に妊娠が確認されると化学的妊娠と判定されます。その後、妊娠5週目以降には超音波検査にて胎嚢が確認され始め、妊娠6週目以降には心拍が確認されるようになります。